神式の葬儀と諡(おくりな)について、熊谷 上之雷電神社

人は、逝く。

その事実の前に立つとき、遺された者の心には悲しみと同時に、何をどうすればよいかという途方もない戸惑いが押し寄せます。とりわけ、故人が神式での葬儀を望んでいた場合、あるいは神道の家に生まれ育ちながらも作法をよく知らないという場合、「戒名はどうするのか」「仏式とどう違うのか」という問いは、喪失の痛みに重なってひとつの重荷となることがあります。

ここに、その問いへの答えを静かに記します。上之雷電神社(法人名・上之村神社)は、熊谷市上之に鎮まり、約1000年の歴史を刻む社です。本社の御祭神は事代主命(ことしろぬしのみこと)、相殿に大己貴命(おおなむちのみこと)と大山祇神(おおやまつみのかみ)をお祀りし、摂社・大雷神社には大雷神(おおいかづちのかみ)が坐します。埼玉県指定文化財を有するこの社において、神式の葬送にまつわるご相談をお受けしています。

神式の葬儀と、戒名に当たるもの

仏式では、故人は寺院から戒名を授かります。では神式ではどうするか。神道には戒名という概念はありません。その代わりに、故人には「諡(おくりな)」が贈られます。

諡とは、故人の俗名に称名(しょうな)を添えたものです。称名とは、性別や年齢によって異なる決まった言葉であり、男性には「大人命(うしのみこと)」、女性には「刀自命(とじのみこと)」、幼い子には別の称名が用いられます。これらの言葉は、故人の在りし日の姿を神前に正しく示すための敬称です。戒名が仏門における新たな名を意味するのとは異なり、諡は故人その人を、その生涯ごと神様の御前にお連れするための名です。

この諡は、霊璽(れいじ)に記されます。霊璽とは、仏式における位牌に相当するもので、故人の御霊(みたま)が宿る依り代です。白木でできた御幣形の御神体であり、仏具店ではなく神具店で求めます。霊璽は祖霊舎(それいしゃ)に納めてお祀りします。祖霊舎は仏壇に相当するもので、家の中に設けた小さな神棚のような場所であり、祖先の御霊をお守りする場所です。

大己貴命と、幽冥界の主宰

なぜ当社で、神式の葬送に関することをお取り次ぎするのか。その答えは、御祭神の御神徳に根ざしています。

当社の相殿に坐す大己貴命は、古くから「幽冥界の主宰」として仰がれてきた御神です。古典の伝えるところによれば、大己貴命はこの世の見える世界(顕世・うつしよ)の経営を事代主命に託した後、幽冥界(かくりよ)へと退き、目に見えない世界を主宰されます。亡くなった人の御霊が向かう世界を司る御神が、当社の相殿にお坐まします。

神式では、人は亡くなると御霊となり、やがて祖霊として子孫を守護する存在になると考えます。死は終わりではなく、見える世界から見えない世界への移行です。大己貴命はその移行を主宰される御神であるゆえに、故人の御霊を正しく送り、諡を定め、霊璽にお祀りするという営みは、この御神の御神徳と深く結びついています。当社でのお取り次ぎには、その必然があります。

夏の境内に、静かに感じるもの

立秋を過ぎてもなお、熊谷の夏は力を緩めません。朝の境内を掃き清めていると、玉砂利の上を渡る風がわずかに変わったことに気づく瞬間があります。人の往来がまだ少ない時間、境内には深い静けさがあります。

その静けさの中で、ふと、亡くなった方々のことを思うことがあります。遺された家族が抱える悲しみと、故人を正しく送りたいという切なる思い。その思いに、この社は向き合ってきました。

故人と向き合う時間は、何かを決めなければならない時間でもあります。諡をどう定めるか。霊璽はどこで求めるか。祖霊舎はどう整えるか。知識のないまま問いだけが増えていく経験は、心に余計な重荷を乗せます。当社では、そうした問いひとつひとつに、神職が誠実にお答えします。

仏式との違いを知ることの意味

多くの方が最初に感じる戸惑いは、「仏式ならわかるが、神式は勝手が違う」という感覚です。これは当然のことです。日本では仏式の葬儀が広く行われており、位牌や戒名、お布施という作法は多くの家庭に馴染んでいます。神式の作法はそれと異なる体系を持っており、言葉も道具も、発想の根本も違います。

大切なのは、優劣ではなく、根底にある考え方の違いを知ることです。仏教では死を成仏への過程と捉えますが、神道では故人は御霊となり、祖霊として家と子孫を守り続けると考えます。だからこそ、霊璽には戒名ではなく諡が記され、祖霊舎には仏壇と同様に日々の供え物と礼拝が続きます。亡くなった後も、故人は家族の傍に在るという考え方が、神道の死生観の核にあります。

この考え方を知ることで、諡や霊璽という作法の意味が、ただの手続きではなく、故人への深い敬意の表れとして感じられるようになります。

当社の諡に関するご案内

上之雷電神社では、神式の葬儀における諡についての解説記事を現行サイトに掲載しています。諡の種類と定め方、霊璽や祖霊舎の基本的な知識について、図解ではなく言葉の力で丁寧にお伝えしています。

また、熊谷市をはじめ、深谷・行田・鴻巣・東松山・羽生・加須など、おおよそ20キロ圏内のご遺族からのご相談をお受けしています。急ぎの場面でも、当社に連絡いただければ、神職が誠実にご案内します。

大雷神の御神徳と、遺された者の心

摂社・大雷神社にお祀りする大雷神は、電気と神経を司る御神です。当社は「心の充電の社」として、現代人の疲弊した神経を鎮め、内に再び明かりを灯す祈りを捧げてきました。

大切な人を亡くした後の心は、深く消耗します。眠れない夜、食べられない朝、ふとした瞬間に込み上げる涙。それは気力の問題ではなく、心身の根幹、神経そのものが揺さぶられている状態です。故人を送る作法を整えることは、遺された者が少しずつ地に足をつけ直すための、ひとつの道でもあります。

諡を定め、霊璽を据え、祖霊舎に手を合わせる。その静かな繰り返しの中で、故人を偲ぶ心が形を持ち、遺された者の内側に、少しずつ安定が戻ってくる。神道の葬送の作法には、そのような力があると当社は考えます。

故人の御霊が、幽冥界の主宰たる大己貴命の御許に安らかに向かわれますよう、そして遺された方々の心に、やがて穏やかな日々が戻りますよう、当社は祈りをもって寄り添います。


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